令和5年度第3回定例会が開催されました。私も、初めての一般質問の機会をいただきました。
また、第3回定例会と並行して決算特別委員会が開催されました。
1 養育費確保支援事業について
全国で140万世帯とされるひとり親家庭のうち、約半数が相対的貧困の状態にあるといわれており、離婚後、別居親から養育費の支払いを十分に受けられないことが、ひとり親世帯の貧困の要因の一つと指摘されているところである。平成28年に行われたひとり親世帯の実態調査結果をみると、養育費の取り決め状況について、母子世帯では54.2%、父子世帯では、74.4%が養育費に関する取り決めをしていない。
また、養育費の受給状況についてみると、母子で、養育費を受けたことがない世帯が56%、父子では、86%にのぼる。
子供のために離婚後は当然のこととして養育費が支払われる社会の実現を行うことが火急の課題であることは明らかであり、ひとり親家庭において、行政がプッシュ型および伴走型支援を行うことの重要性が指摘されているところである。そこで、以下のとおり質問する。
(1)母子・父子自立支援員の周知について
離婚届の問合せや提出の際に、母子・父子自立支援員について積極的に周知し、養育費や親子交流に関する相談を促すことはできないか。
(2)養育費確保支援事業の拡充について
本市の養育費確保支援事業について、法律相談費用の補助、民間ADR申立て費用の補助、強制執行手続きの申立費用および弁護士・司法書士などに対する委任費用の一部補助を進めるべきと考えるが、本市における養育費支援事業の拡充を検討できないか。
(1)母子・父子自立支援員の周知について
本市では子供家庭支援課に自立支援員を配置し、ひとり親となる方に仕事や住まいに関する支援や福祉資金の貸付などの制度について情報提供するとともに、離婚に関する相談をされる方に対しては、養育費の取り決めをするよう促すこととしている。
また、市民課や各支所の窓口に離婚届の用紙を受け取りに来られた方に、法務省が作成した「こどもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」の冊子と併せて自立支援員のチラシをお渡しし、周知に努めている。
より多くの方が自立支援員の相談につながるよう、今後はチラシの配布に加え、窓口で離婚届の記入方法について問合せがあった場合などに、口頭で自立支援員への相談をご案内するなど、更なる周知を図っていく。
(2)養育費確保支援事業の拡充について
ひとり親となる方が必要な情報を取得し、養育費を適切に確保するうえで、弁護士等の専門家の助言を受け、継続的にサポートを受けながら公正証書の作成や調停手続きを行うことで、手続きにかかる負担を軽減させることができるものと考える。
また、民間ADRは、取り決めた内容のみで強制執行力のある債務名義とはならないものの、養育費について話し合いを持つきっかけとなりやすく、また家庭裁判所の調停に比べて解決までの期間が短いこと、休日やオンラインの調停が可能であること、法務大臣の認証を受けた事業所であれば、法律分野の専門知識がある調停人が対応する場合が多いことなど、ひとり親となる方にとって多くのメリットがあると認識している。
さらに、養育費の履行確保に実効性を持たせるためにも、債務名義の作成にかかる支援に加え、ひとり親が強制執行の申立てをするための支援も重要であると考える。
これらの補助については、いくつかの自治体ですでに実施していると承知しているが、こうした補助という形がよいのか、また別の支援の仕方がないか、市のリソース等も勘案しながら調査・研究していく。
2 学校事故の防止、学校の設備管理について
学校事故の典型例としては、つい先日発生した小学生の体育授業中の熱中症による死亡や、クラブ活動中の突然死などがある。また、窓からの転落・ゴールポストの転倒など設備管理に基づく事故もあり、日本スポーツ振興センター(JSC)が詳細なデーターベースを保管している。
学校事故の特徴としては、同じ事故が何度も繰り返されるというコピー事故がほとんどであり、対策についても検討がされているのに、定期的に繰り返される点が指摘されている。
また、平成29年に福岡県大川市の小学生が、授業中にゴールネットにぶら下がったところ、ポストが転倒して亡くなるという事故が発生したが、昨年、同事故についての判決が下された。
学校は、本来、安全な場所でなければならず、例え1件でも設備管理の不備により児童・生徒が負傷したり、命を失ってしまうということは、あってはいけないと考えることから、本市における学校の設備管理の現状について2点質問する。
(1)学校保健安全法施行規則では、毎学期1回以上の安全点検が義務づけられているが、本市における学校における安全点検の実施状況はどうなっているか。
(2)大川市のゴールポスト転倒事故では、ポストを固定しておくべき注意義務があったと判断され、市に約3660万円の支払義務が認定された。サッカーゴールなどの運動器具については、転倒防止のための適切な対応と転倒の危険性に関する啓発活動をより充実させることが肝要と考えるが、市の対応はいかがか。
(1)学校における設備管理の状況について
学校における設備管理の状況について、各校では、月1回、学校安全点検の日を設定し、管理担当者が学校の実状に応じた点検項目による点検を行っている。
点検項目については、文部科学省が作成した「危機管理マニュアル作成の手引き」を参考に、グラウンドや教室など管理責任者を定めたうえで、子供たちが安全に生活できるよう定めている。
窓からの転落事故などへの対応については、令和5年3月に発出された文部科学省通知「消費者安全法第33条の規定に基づく意見等について」において、転落・落下など事故の発生可能性のある箇所は、緊急的な対策が必要であり、教室のレイアウトを変更するなどすみやかな対応を行うよう求められており、同通知を各校園へ周知し対応している。加えて、校園長会議において、長期休業日を活用した再点検も依頼している。
なお、学校に設置されている屋外遊具及び体育器具は、2年に1回、専門業者によって器具類の損傷、劣化、損耗状況を点検し、修繕の必要性等を判定している。
(2)サッカーゴールなどの運動器具転倒防止のための適切な対応について
次に、ゴールポストの転倒事故ついて、教育委員会では、毎年4月に行っている体育担当者会において、個別の用具や施設ごとに点検事項を記した書面を配布するとともに、各校において体育施設・器具の安全点検を適切に行うよう指導している。
具体的なサッカーゴール、ハンドボールゴールの点検事項としては、「腐食部分はないか」「溶接部分が外れていないか」「溶接部分にひび割れなどないか」の3点を挙げている。また、「保管場所が不安定になっていないか」「すぐに倒れるような状態になっていないか」の2点を留意事項として示している。
ゴールポストについては、体育の授業や部活動で頻繁に移動させる必要があり、すべてを杭や器具で固定することや、砂袋で安定させたりすることは困難だが、固定できない場合は横に倒して保管するなど、各校の状況に応じて安全確保に努めている。
今後は、現在行なっている安全点検の項目に加え、砂袋などを使用する固定方法の紹介や児童・生徒への注意喚起の徹底といった、具体的な対応例を記載した資料を担当者会で周知し、環境整備や啓発活動を推進する。
3 高齢犯罪者の再犯防止について
65歳以上の高齢者の検挙数は男女ともに増加傾向にあり、令和3年度の高齢者率は、総数で23.6%、女性に限っては33.5%まで上昇している。また、高齢犯罪者の再犯率は、非高齢者より高く、特に2年以内再入率は、全体が16.8%であるのに対し、65歳以上の高齢者は20.6%と、全世代の中でも最も高くなっている。
高齢者犯罪の増加には、高齢者の孤立化など独特の背景問題があると考えられ、特殊詐欺など高齢者が被害者になる場合の対応とともに、高齢者が犯罪者となる高齢者犯罪についても早急な対応を行うことが必要と考える。
また、犯罪被害者を作らないためには、犯罪加害者を作らない・犯罪を行わせないことが最も有効な手段であり、安全・安心なまちづくり、地域の安全の観点からすると、司法と福祉を連動させ、高齢者犯罪、特に高齢者の再犯防止を図るための行政のケア・積極的な支援が望まれる。
そこで、次の2点につき質問する。
(1)高齢犯罪者の再犯防止の観点からは、再犯防止計画を策定した人権推進部と実際に各種支援制度を実施している健康福祉局など各部署の庁内連携をどのように取るか。
(2)また、警察・刑務所や弁護士会など部関連機関との連携をいかに取るか。
(1)高齢者の再犯防止に向けた庁内連携について
本市では、令和5年4月に「西宮市再犯防止推進計画」を策定し、再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、市民が安全で安心して暮らせる社会の実現を目指している。
高齢者の犯罪の中には、「様々な課題」を抱え、再犯を繰り返す人がいる。こうした課題に起因して繰り返される犯罪の一部については、医療や福祉などの行政サービスを受けることにより犯罪を未然に防止することが可能な場合もある。本市では、住居確保支援や保健医療・福祉サービスなど、再犯者を含め利用できる様々な既存のサービスがあり、これらの行政サービスを必要とする人へ、必要なサービスが届けられるよう先進事例も参考に、情報提供の方法や相談者にとって必要な支援へのつなぎ方など、研究するとともに、庁内関係各部署と課題の共有やその解決に向け、これまで以上に連携を進めていく。
(2)高齢者の再犯防止に向けた外部関係機関との連携について
次に、高齢者の再犯防止における警察・弁護士会等外部関係機関との連携については、現状では、犯罪をした人かどうかの情報は、警察や裁判所などの国県の刑事司法関係機関のみが把握しており、犯罪をした人かどうかを地方自治体が知り得る方法が確立されていない。このため、犯罪をした人に対して行政サービスを提供するためには、当事者から直接市の窓口で申し出があるか、法務大臣から委嘱された保護司を介して相談頂くなどの方法によらざるを得ないのが現状である。
平成29年に策定された国の「再犯防止推進計画」においては、地方公共団体との連携強化等のための取組に関して、地方公共団体は支援を必要としている対象者に関する情報の収集が容易ではないことなどの課題があり、このことが、地方公共団体が再犯の防止に係る施策を進めていく上での課題となっていることが現状認識として示されている。
そのうえで国は、「犯罪をした者等の支援等に必要な情報の提供については、法務省は、警察庁、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省の協力を得て、個人情報等の適切な取扱いに十分配慮しつつ、適切に情報を提供する」としている。
市としては、本市域を所管する神戸保護観察所との連携を基本としつつ、行政サービスの提供に向け、国等の動向を注視しつつ国県等の関係機関との連携の在り方について先進事例も参考にし、研究していく。