近年豪雨水害の激甚化が進んでおり、東京都の河川対策の基準となる1時間50ミリメートル以上の降雨件数は、1980年代には20件だったものが、2000年代には53件と倍増しています。
都市部での豪雨水害は、巨大な経済被害をもたらします。2018年の西日本豪雨など、巨大水害への対策が求められるようになり、激甚化する災害への備えに国は、15兆円程度の予算(2021年から2025年)を計上するとともに、都道府県でも対策が進められるようです。
西宮市においてもトンネル工事に強みを持つ大豊建設が、津門川の一部流域に全長1700メートルの地下トンネルを掘削する予定であり、同工事により3万4000平方メートルの雨水の貯留が可能となり、1時間61.5ミリメートルの大雨に対応が可能となるとのことです。
発注者は兵庫県ですが、総延長3800メートルに延伸することで、大阪湾まで放流することを可能にして貯留できる雨水量を増やす計画を立てています。
西宮は清酒造りが盛んな地域で、トンネルを掘削する地帯では、地下水脈の井戸水を用いるため「井戸水に溶けにくいセメント材料を用いたり、井戸の観測を行うなどした」とのことです。
また、ゼネコンの土木技術による水害対策はトンネル掘削以外のソフト面でも広がっており、鹿島建設がオフィスビルや公共施設の水害リスクについて、リスク評価から止水版などの設置工事、建物の運用まで一貫してコンサルティングする事業を開始したとのことです。
豪雨水害の激甚化に備えた防災・減災対策がハードとソフトの両面で進んでおり、伝統的な土木工事技術であるトンネル掘削を通じて効率的な水害対策が進められることは心強い限りであるとともに、国民のコンセンサスを得た事業が進められることを望みます。