4月1日よりこども家庭庁が発足します。「子供子育て政策は、最も有効な未来への投資であり、最優先の課題」と岸田首相が説明するところであり、概ね次のような体制をとることになるようです。
- 成育局 すべての子供の育ちを支援する局で、妊娠期から2歳までの伴奏型相談支援や保育園・こども園をめぐる政策を担当する。
- 支援局 困難を抱える子供・若者を受け持つ。 家庭内の虐待、貧困、いじめ、ヤングケアラーなどに対応する。
- 長官官房 これらの子供支援についての企画立案や全体調整を行うとともに、少子化対策を取り仕切る。
同庁の特徴としては、他省庁の対応に問題や不備があれば、改善を求めることができる「勧告権」が付与される点にあり、他省庁に対し、「司令塔」としての対応を問われることになります。
縦割り行政を打破し、子供の成長に関する問題を一元的に対応できるこども家庭庁の存在自体は、非常に有意義なものであり、もっと早く実現すべきであったと考えます。
もっとも、結局は、同省庁が実際にどのような機能を有し、実効性があるのかが問題であり、形だけのポーズになってしまっては、まったく意味がなくなります。
子育てに関して、お父様お母様の悩みは様々であり、子育てを親や家庭の個人的な問題ではなく、行政や自治体が、ともに子育てを行うという姿勢を見せることは必要不可欠であり、お父様・お母様の孤立化を防ぐことが重要だと思います。
また、お子様自体、家庭内DV、いじめ・ヤングケアラーの問題など、様々な問題を抱えており、孤立化を防ぎ、相談をしながら、社会全体として問題を解決していく姿勢を示すことが肝要だと思います。
2021年度に児童相談所が対応した児童虐待は、20万7000件、2022年の小中学生の自殺が、514人にのぼるなど、子供たちの生命や心身に重大な被害が生じることが懸念されます。
政府は、「国連子どもの権利条約」や「こども基本法」の理念に乗っ取り、子供の視点に立ち、子供の利益を第一に考える「こどもまんなか社会」を目指すと表現するようですが、いずれにしても、子供に対してかける予算の確保を図ることが必要不可欠であることは、明らかです。
一方、政府は3月31日に、「異次元の少子化対策」のたたき台となるこども・子育て政策強化の試案を発表しました。
今後、3年間の集中取り組み期間の中で、児童手当の所得制限撤廃などの経済的支援・子育てサービスの向上、全年齢層への切れ目ない支援、男性育児休暇の推進などを推進するとのことです。
我が国の社会支出のうち家族関係支出(保育・児童サービスなどの子育て世帯向け支出)は、1990年度に約1.6兆円だったものが、2020年には、10.8兆円に増加しています。しかし、世界レベルで比較すると、日本のGDPに対する家族関係支出の比率は、1.7%であり、スウェーデンの3.4%、フランスの2.7、ドイツの2.5%など他の先進諸国には遠く及びません。
今回政府が打ち出した少子化対策についても、実際の財源確保については、まったく議論が進んでおらず、今後の議論を待つとのことで、単に、4月の統一地方選などのアピールに使っているだけではないかと危惧されるところです。
少子化対策・子育て支援のための財源確保のために、国民に増税を強いることは明らかであり、国民の納得を得るためにも、その場しのぎのバラマキ政策はやめていただき、具体的な数字を検証し、長期スパンで具体的な計画・指針を示し、実のある子育て政策が実現することを強く希望します。